注目キーワード

タチコマもビックリ?ロボットハンドを自作する!      【からくり研究所】ロボットハンド 試作1号

からくり技術研究所では、「ロボット製作に使える機械工学のメカニズムを実際に動かしてみよう!」ということで、地道に短めの記事でやっていくコーナーです。

主に、ロボット製作で使うための機械的な仕組みを実際に作って、動かして、測定してみます。

 

この連載記事では、タミヤ模型さんの「楽しい工作キット」と3Dプリンター「ORIGINAL PRUSA i3 MK3S+」を使って、仕組みを組み立てています。

 

今回は「ウォームギア」を使ったロボットハンドの製作記事です。

すけろく
突然だが、ロボットの手を作るのに
必要な構造はどんなかな。
げんろく
産業ロボットなどは、2本指や溶接機がついていたり。
用途に応じて、いろんな種類がある。
すけろく
漫画やアニメなどでは、4本以上の指を持った
ロボットも多いな。
げんろく
じゃあ、今回は4本の指が同時に動いて
同じ力でホールドするようなものを作ってみよう。
皆さんは、ロボットの手といえば、どのようなイメージを持っていらしゃるでしょうか。
こんな感じ?
画像は2本の指で挟んで掴むロボットハンドになっています。
前回の記事では、ロボットアームの部分について試作してみましたので、今回は掴む部分(ロボットハンド)を試作してみます。
せっかくなので、4本の指でものを掴むことができるロボットハンドにします。
試作にあたり、以下の目標を立てました。
  • 4本の指を持ち、すべての指が同時に同じ速度、力で動作する
  • 動力は、モーター1つで動作させる

 

動作を単純化して考える

いきなりCADソフトなどで3Dモデル化!ってできればいいですが、そこまで優秀な頭は持っていないので、今回のロボットハンドの動作を単純化して考えた後に、3Dモデル化します。

 

指先の動作イメージ

今回は4本の指が同じように動作するので、まずは1本の指のみの構成で考えてみます。

指の動作イメージは次のようになります。

指を直角に折り曲げたパーツと、横方向に動力を伝えるパーツの2つで構成しています。
このような構成にすることで、横方向に動力を伝えると指先、ジョイント部が図のように移動しながら、指が開きます。
また、指を閉じるには逆方向に動力を伝えるだけになります。
この動作を行うためには、位置固定点を設ける必要があります。
今回は4つの指を持つものを試作するので、この仕組みを4つ実装したものを3Dモデルとして考えます。

横方向の動力をどう実装するか

次に横方向への動力を伝える仕組みをどうするかを考えます。

今回はモーターを使って実装したいと考えているので、モーターの回転運動を直線運動に変換する必要があります。

そこで、以下のような仕組みを考えました。

モーターの回転運動をウォームギアの仕組みを使って横方向の動力に変換しています。

ウォームギアについては、次の記事で紹介していますのでご覧ください。

ウォームギアについてはこちら!

関連記事

すけろく 3Dプリンターは作った。 実際に稼働部品というのは、3Dプリントできるのだろうか・・・ げんろく そうだな。 品質を確認するために、機械部品をプリントしてみるか。 す[…]

 

3Dモデル化を作ってみる

では、3Dモデルを作ってみました。
次の画像は、1本の指のみを表示しています。
黄色と赤のパーツが、前章の「指の動作イメージ」で説明した部品です。
緑と紫のパーツが、前章の「横方向の動力をどう実装するか」で説明した部品です。
3Dモデルを作っていて気づいたのですが、緑パーツがウォームを回転させた際に一緒に回転してしまわないようにする必要がありました。
そのため、フレーム(白パーツ)を改良しています。
これでウォーム(紫パーツ)が回転することで緑パーツが横方向に動き、赤パーツによって引っ張られた指(黄色パーツ)が開くような仕組みになっています。
最終的な形は、次のようになりました。

ウォームの構造

ウォームは、回転軸に固定するため、M3イモネジで締め付けるための穴を設けています。

φ3㎜のシャフト用の穴をつけています。

 

ギアの構造

ウォームに対するギア部分は、上下でパーツを分割して製作しています。

 

 

フレームの構造

フレームは、前、後の2つのパーツに分けて構成しています。
フレーム(前)と、フレーム(後)とネジで固定するために、赤点線の部分にM3ネジ用のナットを埋め込む穴をつけています。

指パーツの構造

指パーツは、次のような構造にしています。

試作用のデータを作る

今回の構造は、少し複雑になっているので、3Dプリンターを使って各パーツを作っていきます。

3Dプリンター「ORIGINAL PRUSA i3 MK3S+」を使って印刷しますので、印刷データ生成ソフト「PrusaSlicer」を使います。

3Dプリントデータは以下のパーツ毎に生成しました。

  1. シャーシ(前)
  2. シャーシ(後)
  3. ウォーム
  4. ギア(上)
  5. ギア(下)
  6. 指パーツ
指部分の3Dプリントデータ
指部分の3Dプリントデータ

印刷データ生成時には、次の条件に注意して配置すると失敗が少なく作業がはかどります。

  • 印刷面席が大きいパーツは単体で生成する
  • 小さいパーツは複数並べて配置してもいいが、プリンターのノズルの移動量を抑える
  • ウォームなどのネジ山は縦方向に印刷する

 

ORIGINAL PRUSA i3 MK3S+で印刷する

今回は、「PETG」フィラメントを使用して「ORIGINAL PRUSA i3 MK3S+」で印刷しました。

フレームの一部を印刷する際にひげが出ましたが、その他のパーツは非常にきれいに印刷できました。

ウォームとギアのパーツの精度バッチリで、スムーズに回転します。

次の動画に試作した工程を動画にしていますのでぜひご覧ください。

 

 

 

印刷結果と組み立て

ロボットハンドの動力&固定用台座

ロボットハンドの動作確認をするため、モーターとの接続と固定を行うために、「タミヤ 楽しい工作シリーズ」の次のパーツを使いました。

出来上がったモーターと固定用台座は次の通りです。

 

タミヤ 楽しい工作シリーズ

ユニバーサルギアボックス

タミヤ 楽しい工作シリーズ No.103 ユニバーサルギヤーボックス (70103)
モーター付きのギアボックスとして販売されています。このタイプはギアボックスを使用してモーターの回転軸に対して直角に回転運動を変換できます。ユニバーサルプレートに対してねじで固定できるようになっていて、モーター自体の動きをしっかりとプレートに固定できます。
出力シャフトはしっかりとした六角3㎜シャフトがついています。
ギア比は次の通り変更できます。
高速:101:1、中速:269:1、低速:719:1

<含まれるもの>
・シャフト類
・モーター
・ネジ、ナット類(M3のみ)
・ギヤー(24枚ギヤー、26枚ギヤー)など

Amazonで確認

ユニバーサルプレートL

タミヤ 楽しい工作シリーズ No.172 ユニバーサルプレートL 210×160mm (70172)
楽しい工作キットで作るものを取り付けるベースになります。
私は、試作をする際に、このプレートの上にいろいろ固定して動かしています。おすすめとしては、このプレートの四隅にスペーサなどを取り付け、少し地面から浮かせるようにすると、部品を取り付けた際のナットやネジの出っ張りを吸収できますよ!ぜひ試してみてくださいね!

<含まれるもの>
・プレート本体
・取付パーツ
・ネジ、ナット類(M3のみ)

Amazonで確認

ユニバーサルアームセット

タミヤ 楽しい工作シリーズ No.143 ユニバーサルアームセット (70143)
長さ170㎜のユニバーサルアームが4本入ったものです。初めての購入に最適なセットになります。
セットには色違いのものもあります。先述のとおり、カッターとニッパーがあれば、切り出し、切断が可能なので長さを自由に変えることができ、ねじ止めする箇所を5㎜間隔で設けられた穴から選択して組んでいけるため、自由度が高いです。切断部分は、紙ヤスリなどで研磨してきれいに加工することができます。

<含まれるもの>
・ユニバーサルアーム(170㎜)
・直角パーツ
・スペーサ
・ネジ、ナット類

Amazonで確認

電池ボックス

タミヤ 楽しい工作シリーズ No.151 単3電池ボックス 2本用 スイッチ付 (70151)
スイッチ付きの電池ボックスです。スイッチにより電流の流れを切り替えてモーターなどを逆回転などができます。
単三電池2本を直結しています。
このパーツの固定用ネジは、2㎜のものが使われています。楽しい工作シリーズの他の商品は基本3㎜なので注意が必要です。

<含まれるもの>
・電池ボックス1個
・組み立て式逆転スイッチ、
・固定用ビスや配線コード

Amazonで確認

 

ロボットハンドの組み立て

ロボットハンドを組み立てました。組み立て後は、次のようになりました。

いいですね。いい感じ。なかなかの完成度です。

実際に動いている様子を含め動画にしていますので、ぜひご覧ください。

 

 

編集後記

いかがだったでしょうか。

3Dプリンター「ORIGINAL PRUSA i3 MK3S+」を使って、このような動くモデルも作ることができました。

今回使ったモーターではトルクが不足していたので、モーター部分には改善が必要ですが、概ね思い通りのものが出来上がりました。

今後も、機械のからくりについて、実践してい行きたいと思いますので、ご期待くださいね!

 

最後まで、ご視聴いただきましてありがとうございました。

 

今回使用した3Dプリンター「ORIGINAL PRUSA i3 MK3S+」はこちらからどうぞ!

3Dプリンター(キット)

Original Prusa i3 MK3S+ 3Dプリンター (キット) [日本正規品]
オープンソースの3Dプリンターの仕様を作った技術者が作った会社の3Dプリンターです。この商品は、自分で組み立てることが前提です。マニュアルも日本語化されていて、組み立てで特に手順に困るということはありませんでした。非常によくできた製品で、印刷品質も高いので非常に満足できます。
ちなみに「HARIBO」というお菓子もついている(笑)ので楽しみながら組み立てられます。
Amazonで確認

3Dプリンター(組み立て済み)

【日本正規品】最新モデル Original Prusa i3 MK3S+ 組み立て済 3Dプリンター
オープンソースの3Dプリンターの仕様を作った技術者が作った会社の3Dプリンターです。この商品は、すでに完成済みで調整もされているものです。私は自作キットのほうを購入しましたが、非常によくできた製品で、印刷品質も高いので非常に満足できます。
買ってすぐに印刷が楽しめるのもいいですね!
Amazonで確認
Prusament PETG (Prusa Orange)
非常にきれいにまかれていて、印刷していて安心感がある製品です。私が購入した白色は、執筆時点でAmazonでは表示されなかったので、同社の他の色をご紹介しておきます。印刷品質もよく、研磨もできる素材なのでおススメです。
Amazonで確認