ミニケース「KARAKURI -HAKO-」を構成する各部品間でやり取りする信号と電力供給のための回路を設計します。
前回の電源供給に関する検討で決まったことをもとに具体的な回路図に落としていきます。
回路図は以下の2つのツールを用途で使い分けながら作っています。
基本は、「Fusion360」を使って回路図を描きますが、電流や電圧の流れなどの確認時に「LTspice XⅦ」を使います。
1.各部品と電源の接続イメージ
今回の各部品と電源の接続イメージはざっくりとこのようなイメージになります。
2.各部の詳細
①DCジャック
DCジャックは、電源アダプターからのケーブルの受け側です。
今回はセンタープラスのものを使います。(※電源アダプターもセンタープラスのものを使います)
円中心の端子が「Vin(+)」、円外側が「GND(ー)」です。
②変圧回路
変圧回路は、前回検討した三端子レギュレータを使った変圧回路を使い12Vから5Vを取り出します。
ノイズ低減
電解コンデンサは+とーの区別があります。
今回は想定している発熱量が高いためヒートシンクをつけることで対策します。
回路図は次のようになります。先ほどのポイントに忠実に線を引いています。
熱対策についてですが、今回の構成(12V⇒5V)で想定される損失は、電圧差(7V)×電流量(650mA)=4.5Wです。
今回使う三端子レギュレータ(TS4805S)の仕様書を確認するとヒートシンク(放熱板)が必要です。
そのためヒートシンクをつける必要があります。
目標熱抵抗は、部品の仕様や動作環境において許容できる温度で動作させるために必要な熱抵抗のことです。求めた目標熱抵抗よりも低い熱抵抗になるよう部品を構成することで適切な温度下での動作が可能となります。
目標熱抵抗を求めるためには以下をパラメータを使います。最終的に求めるのは熱抵抗(ヒートシンク部)になります。
目標熱抵抗の計算式と各熱抵抗の関係は、
となり、図で示すと
今回の動作条件と三端子レギュレータの仕様を使って計算すると
となり、ヒートシンクに求められる熱抵抗は13.75℃/W以下となります。
ようやくヒートシンクを選ぶ条件が求まりました。ではヒートシンクの仕様から条件にあうものを選択します。
図の熱抵抗値を確認してください。この値が先ほど求めた値以下になっていますのでこちらにします。
③FAN用コネクタ(ピン)
120㎜FANはコネクタを2つ持っていますが、これはFANへの電源供給と回転制御信号、回転数センサー信号のための4つの線で構成されています。コネクタ部は以下のような仕様になっています。
今回は回転センサーについては使いませんので説明は省略します。
回転制御信号(PWM)については以下の記事で紹介しています。
>>回転制御信号(PWM)についてはこちら
④LED用コネクタ(ピン)
120㎜FANの2つのコネクタの残りのコネクタです。このコネクタは、FANに搭載されているLEDへの電源供給とLED制御信号のための3つの線で構成されています。コネクタ部は以下のような仕様になっています。
左からGND(ー)、なし、LED制御信号、Vin(+)という構成になっています。
LED制御方法には、今回使用するARGBとは別にRGBという仕様があります。
両者の違いとARGBの信号制御の仕方については以下の記事で紹介しています。
>>LED制御信号(PWM)についてはこちら
⑤コンピュータ用コネクタ:GPIO(ピン)
コンピュータ「M5StickC」には以下の3つの接続形式の端子が存在します。
写真のように各ピンが設定されています。
①GND
②5V→(出力)
③G26
④G36
⑤G0
⑥BAT
⑦3V3(出力)
⑧5V←(入力)
M5StickCを動作させるためには①GNDと⑧5V←を電源回路に接続する必要があります。
写真のように各ピンが設定されています。
①GND
②Vout
③G32
④G33
今回は、回路基板との接続にQIコネクタ側、温湿度センサー(DHT11)との接続にGroveコネクタ側を使用します。USB-CUコネクタはプログラムの書き込み以外は使用しません。
QIコネクタ側
※G33のピンは接続はしません。
Groveコネクタ側
上記を見て、「あれ? G36とG33を選ばなかった理由はなんだろ?」と思われた方。
なんと、仕様でPWMという形式の信号は「G36」では出せない・・・ことがわかりました。
③温湿度センサーコネクタ:GPIO(ピン)
Groveコネクタ側
また、今回使用する温湿度センサー製品に付属のケーブルですが、M5StickC接続側のコネクタがQIコネクタになっています。
M5StickC のGroveコネクタに接続するためにはコネクタを変更する必要があります。
この辺りは次回の「第9回 電子部品の準備」で解説しています。
3.回路図全体を描く
回路図全体を描いてみました。
点線はGND(ー)、実線はVin(+)を表します。
実際の部品を軸に書いているので線が長くなっているところがあります。
以上で、回路図を描くは終了です。回路に必要な電子部品と信号の種類がわかりました。
次回は必要な電子部品を準備します。