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第8回 回路図を描く -HAKO-

ミニケース「KARAKURI -HAKO-」を構成する各部品間でやり取りする信号と電力供給のための回路を設計します。

前回の電源供給に関する検討で決まったことをもとに具体的な回路図に落としていきます。

回路図は以下の2つのツールを用途で使い分けながら作っています。
基本は、「Fusion360」を使って回路図を描きますが、電流や電圧の流れなどの確認時に「LTspice XⅦ」を使います。

Autodesk fusion 360 
各部品接続含め回路図とPCB基板の物理設計のために使用します。
Analog Devices LTspice XⅦ
電源回路などのアナログ回路のシュミレーションを行います。

 

1.各部品と電源の接続イメージ

今回の各部品と電源の接続イメージはざっくりとこのようなイメージになります。 

 

2.各部の詳細

①DCジャック

DCジャックは、電源アダプターからのケーブルの受け側です。
今回はセンタープラスのものを使います。(※電源アダプターもセンタープラスのものを使います)

DCジャックは写真のようなものでケーブルを指して使います。
円中心の端子が「Vin(+)」、円外側が「GND(ー)」です。

 


②変圧回路

変圧回路は、前回検討した三端子レギュレータを使った変圧回路を使い12Vから5Vを取り出します。

ポイント
 
入力端子(IN)側の
ノイズ低減
三端子レギュレータのIN側の近傍に0.1μFの積層セラミックコンデンサを接続します。
出力電圧の安定化
三端子レギュレータのOUT側の近傍に容量の大きな047μFの電解コンデンサを接続します。
電解コンデンサは+とーの区別があります。
保護回路
三端子レギュレータはIN側の電圧がOUT側の電圧よりも大きいことを前提としてます。電源切った際などにIN側の電圧がなくなり、OUT側に残留電圧がある場合、IN側の電圧よりも高くなることがあり、三端子レギュレータが壊れてしまう可能性があるため、保護用として高速スイッチング・ダイオードをつけています。

熱対策
三端子レギュレータでは、5Vを取り出した残りの7Vについては損失(W)として熱に変わります。この熱により高温になると故障の原因となるため対策が必要です。
今回は想定している発熱量が高いためヒートシンクをつけることで対策します。

 

回路図は次のようになります。先ほどのポイントに忠実に線を引いています。

 

熱対策についてですが、今回の構成(12V⇒5V)で想定される損失は、電圧差(7V)×電流量(650mA)=4.5Wです。

今回使う三端子レギュレータ(TS4805S)の仕様書を確認するとヒートシンク(放熱板)が必要です。

そのためヒートシンクをつける必要があります。

 

ヒートシンクの選定方法は?
選定には目標熱抵抗(℃/W)というものを使います。
熱の伝わりにくさを数値化したものです。熱抵抗が高ければ熱が伝わりにくく、低ければ伝わりやすいことを意味します。熱の発生源と外気の間の熱抵抗が高いと空気中に放熱されず(熱が伝わらない)、部品内部で熱がこもってしまうというイメージです。逆に熱抵抗が低いと熱がこもる前に放熱されるため部品の温度が上がりづらくなります。

目標熱抵抗は、部品の仕様や動作環境において許容できる温度で動作させるために必要な熱抵抗のことです。求めた目標熱抵抗よりも低い熱抵抗になるよう部品を構成することで適切な温度下での動作が可能となります。

目標熱抵抗を求めるためには以下をパラメータを使います。最終的に求めるのは熱抵抗(ヒートシンク部)になります。

目標熱抵抗の計算式と各熱抵抗の関係は、

となり、図で示すと

今回の動作条件と三端子レギュレータの仕様を使って計算すると

となり、ヒートシンクに求められる熱抵抗は13.75℃/W以下となります。

ようやくヒートシンクを選ぶ条件が求まりました。ではヒートシンクの仕様から条件にあうものを選択します。

図の熱抵抗値を確認してください。この値が先ほど求めた値以下になっていますのでこちらにします。

 


③FAN用コネクタ(ピン)

120㎜FANはコネクタを2つ持っていますが、これはFANへの電源供給と回転制御信号、回転数センサー信号のための4つの線で構成されています。コネクタ部は以下のような仕様になっています。

Cooler Master MasterFan MF120 HaloのFANコネクタ
Cooler Master MasterFan MF120 HaloのFANコネクタ
左からGND(ー)、Vin(+)、回転センサー、回転制御という構成になっています。コネクタの向きはコネクタの上部にある突起部分で判断します。突起部分があるほうがGND側です。
FAN側
回路基板側
GND(ー)
GND
Vin(+)
12V Vin(+)
回転センサー
未使用
回転制御
 
FAN回転制御信号(PWM)

今回は回転センサーについては使いませんので説明は省略します。
回転制御信号(PWM)については以下の記事で紹介しています。

>>回転制御信号(PWM)についてはこちら

 


④LED用コネクタ(ピン)

120㎜FANの2つのコネクタの残りのコネクタです。このコネクタは、FANに搭載されているLEDへの電源供給とLED制御信号のための3つの線で構成されています。コネクタ部は以下のような仕様になっています。

Cooler Master MasterFan MF120 HaloのLEDコネクタ
Cooler Master MasterFan MF120 HaloのLEDコネクタ
使用する「Cooler Master MasterFan MF120 Halo」はARGB(アドレッサブルRGB)という仕様に対応しています。
左からGND(ー)、なし、LED制御信号、Vin(+)という構成になっています。
FAN(ARGB)側
回路基板側
GND(ー)
GND
なし
なし
LED制御信号用
LED制御信号(PWM)
Vin(+)
 
Vin(+)

LED制御方法には、今回使用するARGBとは別にRGBという仕様があります。
両者の違いとARGBの信号制御の仕方については以下の記事で紹介しています。

>>LED制御信号(PWM)についてはこちら

 


⑤コンピュータ用コネクタ:GPIO(ピン)

コンピュータ「M5StickC」には以下の3つの接続形式の端子が存在します。

QIコネクタ
7つのコネクタがあります。
写真のように各ピンが設定されています。
①GND
②5V→(出力)
③G26
④G36
⑤G0
⑥BAT
⑦3V3(出力)
⑧5V←(入力)
M5StickCを動作させるためには①GNDと⑧5V←を電源回路に接続する必要があります。
Groveコネクタ
4つのピンで接続するコネクタです。
写真のように各ピンが設定されています。
①GND
②Vout
③G32
④G33
USB-Cコネクタ
PC接続用コネクタです。このコネクタを経由してプログラムの書き込みを行います。またUSB給電も可能なので、ケーブルを接続すると電源が入ります。

今回は、回路基板との接続にQIコネクタ側、温湿度センサー(DHT11)との接続にGroveコネクタ側を使用します。USB-CUコネクタはプログラムの書き込み以外は使用しません。

回路基板とM5StickCのQIコネクタ側を以下のように接続します。
M5StickC
QIコネクタ側
回路基板側
5V←(入力)
5V Vin(+)
GND(ー)
5V GND
G26
FAN回転制御信号(PWM)
G0
 
LED制御信号(PWM)
温湿度センサーとの接続はGroveコネクタ側を以下のように接続します。
※G33のピンは接続はしません。
M5StickC
Groveコネクタ側
温湿度センサー側
G32
温湿度取得信号
Vout
5V Vin(+)
GND
5V GND(ー)

上記を見て、「あれ? G36とG33を選ばなかった理由はなんだろ?」と思われた方。
いいところに目を付けましたね。私も使い始めのころ「G36」でFAN回転制御信号(PWM)を出そうとしましたが。。。
なんと、仕様でPWMという形式の信号は「G36」では出せない・・・ことがわかりました。
結構、時間かけて、「なぜ出ないんだー!!」ってやっていましたが、無駄でした。。。
あと、「G33」は単純にGroveコネクタのGND側から順番に使ったほうがわかりやすいので使っていません。
そのあたりの詳しい内容は別記事で書こうと思います。
 

③温湿度センサーコネクタ:GPIO(ピン)

同じDHT11という温湿度センサーでもいろいろな製品が出ていますが、今回はコネクタとケーブルがセットになっているものを使います。コネクタ部分は以下のような仕様になっています。
温湿度センサー側
M5StickC
Groveコネクタ側
5V GND(ー)
GND
5V Vin(+)
Vout
温湿度取得信号
G32

また、今回使用する温湿度センサー製品に付属のケーブルですが、M5StickC接続側のコネクタがQIコネクタになっています。
M5StickC のGroveコネクタに接続するためにはコネクタを変更する必要があります。
 
変換先のコネクタは、Groveコネクタと互換性のある「XHコネクタ ハウジング 4P XHP-4」に変更します。
この辺りは次回の「第9回 電子部品の準備」で解説しています。

3.回路図全体を描く

 

回路図全体を描いてみました。
点線はGND(ー)、実線はVin(+)を表します。

KARAKURI-HAKO-の回路基板全体図
KARAKURI-HAKO-の回路基板全体図です。

実際の部品を軸に書いているので線が長くなっているところがあります。

 

以上で、回路図を描くは終了です。回路に必要な電子部品と信号の種類がわかりました。
次回は必要な電子部品を準備します。