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【からくり技術研究所】液体を送る!逆送もできる!「チューブポンプ」を自作する

からくり技術研究所では、「ロボット製作に使える機械工学のメカニズムを実際に動かしてみよう!」ということで、地道に短めの記事でやっていくコーナーです。

主に、ロボット製作で使うための機械的な仕組みを実際に作って、動かして、測定してみます。

 

この連載記事では、タミヤ模型さんの「楽しい工作キット」と3Dプリンター「ORIGINAL PRUSA i3 MK3S+」を使って、仕組みを組み立てています。

 

今回は「チューブポンプ」を使った液体/空気の循環の製作記事です。

すけろく
ロボットや、いろんな用途で使える、液体・空気の搬送のため
構造はどんなかな。
げんろく
水中ポンプや、エアーポンプなどがあるが、液体や空気のどちらも送ることができる
ポンプというと「チューブポンプ(蠕動ポンプ)」があるな。
すけろく
よく医療現場の血液を送るのにつかわれているやつか!
げんろく
そう。ポンプ部分が、液体に触れないから、
長期間使えて、交換はチュープのみで良いものだ。
さっそく、作ってみるぞ!
ロボットに限らず、機械を動かす際に必要になってくるのが、液体や空気を正確に送ることができる機構です。
稼働部分の摩擦軽減や、油圧、空気圧などの調整にも必要になってきます。
強力な圧力が必要な場合を除き、正確に液体や空気を搬送できるポンプに「チューブポンプ(蠕動ポンプ)」があります。
こんな感じのものです。
今回は、試作にあたり、以下の目標を立てました。
  • 同じ速度で、同量の液体や空気を、送ることができる
  • 動力は、モーター1つを使う
  • 速度や、ポンプ稼働に使うトルクが得るため、ギア設定が変更しやすいものを使う

動作を単純化して考える

いきなりCADソフトなどで3Dモデル化!ってできればいいですが、そこまで優秀な頭は持っていないので、

まずは、「チューブポンプ(蠕動ポンプ)」の動作を単純化して考えます。

動作イメージ

チューブポンプ(蠕動ポンプ)」は次のような仕組みで、液体や気体を送ることができます。

チューブをつぶすように配置されたパーツが、チューブをつぶしながら回転することで、

チューブポンプのローラが、回転時にチューブまたはホースを圧縮し、真空状態が発生することでチューブ内に流体が引き込まれます。

次の画像では、流体がポンプチューブに引き込まれ、ポンプ内のローラによりトラップされ、次のローラがチューブ上を通過するときに放出されるイメージを示しています。

ローラが回転すると、チューブ内に真空状態が発生し、更に次の流体が引き込まれ、次のローラ通過に備えます。

圧力がかけられるときにチューブをローラとトラックの間に完全に封じ込めることによって、ポンプに正の変位の作用が加わるため、逆流が防止されます。

これにより、ポンプが稼働していないときの逆止弁(チェックバルブ)が不要になります。

 

特徴

チューブポンプ(蠕動ポンプ)」は、次のような特徴があります。

<特徴>

  • チューブのみが流体と接触するため、ポンプが流体を汚染したり、流体がポンプを汚染したりすることがなくなる
  • 流量を安定させることができる
  • どのくらい量を流すかを細かく制御できる
  • 空回し(液体がない状態)でも故障しない
  • 逆回転させると流れる方向が逆になる
  • 長期間利用時に、チューブのみを交換すればよい(経済的)
その他、動作軸が固定されるため、ポンプを動かすための機械的な仕組みも簡単になるなどがあります。

3Dモデルを作ってみる

3Dモデルを作成しました。

真ん中のローラー部が、回転することで、ポンプとして動作するイメージです。

ローラー部と背面パーツの間の隙間は、今回使用するチューブを押しつぶした際のサイズにしています。

この隙間のサイズは、使用するチューブの外径、内径、と硬さによって変わってきます。

 

ローラー部は、中心にシャフトを通す穴を設けていて、周囲に120度ごとに1つのローラーをつけています。
計3つのローラーになります。
ローラーは、回転させることができるように中心に3㎜のシャフトを入れるようにしました。
力が加わった際に、中心のシャフトが空転することを防ぐために、ローラ部の一部に、イモネジでシャフトへ固定できるようネジ穴を設けました。

試作用のデータを作る

今回の構造は、少し複雑になっているので、3Dプリンターを使って各パーツを作っていきます。

3Dプリンター「ORIGINAL PRUSA i3 MK3S+」を使って印刷しますので、印刷データ生成ソフト「PrusaSlicer」を使います。

3Dプリントデータは以下のパーツ毎に生成しました。

  1. 背面パーツ
  2. ローラー
  3. ローラー固定パーツ(裏)
  4. ローラー固定パーツ(表)
  5. 表面パーツ

 

印刷データ生成時には、次の条件に注意して配置すると失敗が少なく作業がはかどります。

  • 印刷面席が大きいパーツは単体で生成する
  • 小さいパーツは複数並べて配置してもいいが、プリンターのノズルの移動量を抑える
  • ウォームなどのネジ山は縦方向に印刷する

ORIGINAL PRUSA i3 MK3S+で印刷する

今回は、「PETG」フィラメントを使用して「ORIGINAL PRUSA i3 MK3S+」で印刷しました。

フレームの一部を印刷する際にひげが出ましたが、その他のパーツは非常にきれいに印刷できました。

各パーツとも、精度バッチリで、スムーズに回転します。

今回使った3Dプリンターとフィラメントはこちら!

ORIGINAL PRUSA i3 MK3S+

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Original Prusa i3
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ORIGINAL PRUSA MK4

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※上記は、MK4の商品になります。MK4Sは執筆時点ではAmazonで販売されていません。
販売されたらリンクをご紹介予定です!

動力部分

チューブポンプ(蠕動ポンプ)」を動作させるためには、ある程度トルクのあるモーターとギアの組み合わせが必要となります。

そのため、今回は、動力部分のトルクをギア比で調整することができる次のものを使用しました。

今回使った動力部分はこちら!

タミヤ テクニクラフトシリーズ No.1  遊星ギヤーボックスセット

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ギアを最大400:1に設定できる遊星ギアを用いたギアボックスセットです。モーターも付属しています。別売りのシャフトとの接続を行うための部品(ジョイントメタル)もついているので、高トルクで使用する際にも、滑りがない動作が実現できます。モーターは、3V使用なので、電池2本の電池ボックスと一緒に使えます。

モーターへの給電には、電流の方向をスイッチで変更できる、次のものを使用しました。

今回使った電池ボックスはこちら!

タミヤ 楽しい工作シリーズ 単三電池ボックス スイッチ付き

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スイッチ付きの電池ボックスです。スイッチにより電流の流れを切り替えてモーターなどを逆回転などができます。
単三電池2本を直結しています。
このパーツの固定用ネジは、2㎜のものが使われています。楽しい工作シリーズの他の商品は基本3㎜なので注意が必要です。

<含まれるもの>
・電池ボックス1個
・組み立て式逆転スイッチ、
・固定用ビスや配線コード

各パーツの固定方法

今回は、3Dプリンタで作成した「チューブポンプ(蠕動ポンプ)」と動力部品を回転軸の高さ、位置をきちんと合わせて(アライメントして)構成する必要があります。
固定に使用する部材として、次のものを使用しました。

今回使った固定用部材はこちら!

タミヤ 楽しい工作シリーズ ユニバーサルプレートL
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楽しい工作キットで作るものを取り付けるベースになります。
私は、試作をする際に、このプレートの上にいろいろ固定して動かしています。おすすめとしては、このプレートの四隅にスペーサなどを取り付け、少し地面から浮かせるようにすると、部品を取り付けた際のナットやネジの出っ張りを吸収できますよ!ぜひ試してみてくださいね!

<含まれるもの>
・プレート本体
・取付パーツ
・ネジ、ナット類(M3のみ)
タミヤ 楽しい工作シリーズ 3㎜シャフトセットL
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回転軸に使えるシャフトのセットです。六角シャフト、円柱シャフト、両側がネジになっているシャフトなどが入っています。
2本ずつ入っているので、自動車などの製作にも使いやすいですよ!

<含まれるもの>
・ 3×150mm六角シャフト2本
・ 3×100mm六角シャフト2本
・ 3×100mm両ネジシャフト2本
・ 3×100mm丸シャフト2本
・ネジ、ナット類(M3のみ)

また、動力部品の軸と「チューブポンプ(蠕動ポンプ)」の軸を合わせるために、次のようにネジとナットを使用して、微調整できるようにしました。

真ん中のナットを調整してパーツを上下に微調整することができます。

固定は4つの足をこの仕組みにすることで、微妙な軸調整ができるようになります。

固定は、上のナットを合わせることで固定できますよ~。

試作であれば、これで十分です。

組み立て

部品は揃いましたので、組み立てててみました。

チューブポンプ(蠕動ポンプ)」と動力部品である「遊星ギア」の回転軸を合わせるように配置しました。

3つのローラーの軸には、次のステンレス製のシャフト(3㎜)を使いました。

強度もよく安心感があります。

 

ステンレスシャフト
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直径3㎜、長さ16㎜のノックピンです。意外とこのサイズのものが無く、50個入っているので、いろいろな用途に使えます。強度もあるので稼働部分の軸としても使えますよ!

回転するローラー部品をシャフトに固定するのに、次の「イモネジ」を使いました。

 

イモネジセット
回転軸を持つ工作をする際に、回転軸のシャフトとパーツを固定するためによく使うイモネジ。このセットは、M3~M8ネジ穴用のイモネジがセットになっています。長さも種類があるので使いやすいです。
一つあれば、しばらくは事足ります。

ローラー部の組み立ても問題なくできました。

さすがの造形精度です。

チューブは、次の熱帯魚用のものを使いました。

柔らかく、品質も高いので、選んでいます。

 

ソフトチューブ
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やわらかく、形がつきづらいので、今回のような工作にも使用できます。本来は、熱帯魚用のポンプ用のものです。品質は良いです。
4.5mあるので、いろんな用途に使えます。

チューブをポンプ内に配置した様子は、次のとおり。

きちんと収まっていて、気持ちいい瞬間です。

1
製作過程や動作などについては、動画でも公開していますので、ぜひご覧ください!

動かしてみよう

それでは、実際に動かしてみましょう。

動作が見やすいように赤く色づけた水を、左から右へ移してみました。

うまく液体を搬送することができていますね!

完成しました!

 

<実は…>

ここまで来るのに、ローラーの直径を変えて、何回かトライしました。

大きすぎるとローラー部がうまく回転せず、小さすぎると吸い込み圧が弱い。

微調整を繰り返しました。意外と微調整しているときは、楽しかったりします。

試行錯誤の結果、ローラーがたくさんたまりました。。。

編集後記

いかがだったでしょうか。

原理と、機構がわかると、自作も意外とできちゃうんです!

3Dプリンターで作ったパーツも、強度はあるので、試作にはピッタリです。

今回の「チューブポンプ(蠕動ポンプ)」を使えば、液体や空気を使った工作などにも活かせそうです。

皆さんも、挑戦してみては、いかがでしょうか!

今回の記事は以上となります。

最後までご覧いただきありがとうございました。

記事内でご紹介した商品はこちら!

ORIGINAL PRUSA i3 MK3S+

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PETGフィラメント

今回はこちらのフィラメントを使っています。安価ですが安定していますので参考にしてください。

 

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タミヤ 楽しい工作シリーズ 単三電池ボックス スイッチ付き

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スイッチ付きの電池ボックスです。スイッチにより電流の流れを切り替えてモーターなどを逆回転などができます。
単三電池2本を直結しています。
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・電池ボックス1個
・組み立て式逆転スイッチ、
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私は、試作をする際に、このプレートの上にいろいろ固定して動かしています。おすすめとしては、このプレートの四隅にスペーサなどを取り付け、少し地面から浮かせるようにすると、部品を取り付けた際のナットやネジの出っ張りを吸収できますよ!ぜひ試してみてくださいね!

<含まれるもの>
・プレート本体
・取付パーツ
・ネジ、ナット類(M3のみ)
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一つあれば、しばらくは事足ります。
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4.5mあるので、いろんな用途に使えます。

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